目的
高品質スマによる大型養殖産業創出
事業化プロジェクトは、「高品質『スマ』による大型養殖産業創出」を課題としています。私たちは、すでにスマの完全養殖と早期種苗生産による高成長化技術を開発し、生産・販売に繋げていますが、本プロジェクトで目指すのは、「①品質のよいものを、②たくさん作る」技術を開発することです。①に向けては、高成長や低温耐性など、優れた形質を持ったスーパーエリート個体を選抜し、永続的に利用していくために、バイオテクノロジー技術を用いて効率的に生産する技術を開発します。また②では、種苗大量生産のための栄養化の高い初期人工餌料の開発を進めています。
テーマ1 次世代育種システム構築
高成長や低温耐性など、優れた形質を持ったスーパーエリート個体を選抜し、永続的に利用していくためのバイオテクノロジー技術を開発します。
コア技術1
スーパーエリート選抜育種を最大限に効率化する方法の開発
コア技術2
最先端のバイオテクノロジー技術による「次世代型育種システム」実現への挑戦
次世代育種システム
学術領域横断的な最先端のバイオテクノロジー技術によりすぐれたスマを短期間で作り出す。
活動報告
完全養殖スマの高品質化
養殖魚の「品質」は遺伝的背景、飼育法、季節、年齢、性成熟の程度、サイズ、鮮度、締め方、保存温度など様々な要素の影響を受けるため、高品質な養殖スマ生産のためには、各要素がどのように関連し、品質指標に影響するのかを理解する必要があります。本研究では、スマの品質に関する大量データを用いた養殖スマの高品質化を目指し、養殖あるいは天然のスマを購入し、官能試験による味の評価も含む様々な計量形質を測定・記録しました。養殖スマに関しては、DNAマーカーによる親子鑑定を行いました。得られたデータを統合し探索的データ解析を行ったところ、季節性の変動を示す形質、年齢に伴い直線的に増加する形質、および様々な相関形質が明らかになるとともに、いくつかの形質では比較的高い遺伝性が示唆されました。本研究により、「高品質なスマの特徴」が明らかとなりました。これらの情報をもとに養殖スマの親魚選抜を行っています。
スマの次世代育種システムとその将来展望
スマはハンドリングに極めて弱く、通常の選抜作業を用いての育種は困難です。そこで、スマの生物学的弱点を克服し、養殖サイクルの中で”より良い種苗”を作るための仕組みを考案し、これを”次世代育種システム”と命名しました。次世代育種システムは、魚類の借腹生産技術を軸としており、①優良個体の選抜、②生殖細胞の凍結保存バンク(スマバイオリソース)、③借腹魚生産、④DNA親子鑑定による種苗の検証、⑤種苗生産用親魚選抜、から構成されています。本プロジェクトでは、スマに最適化したこれら技術群を開発し、社会実装への道筋を構築しました。今後は、愛媛県の主要な養殖魚へ次世代育種システムを展開していきます。
後藤理恵 准教授
愛媛大学 南予水産研究センター
本プロジェクトで目指すのは、「品質のよいものを、たくさん作る」技術を開発することです。高成長や低温耐性など、優れた形質を持ったスーパーエリート個体を選抜し、効率的に生産するために、全く新しいバイオテクノロジー技術を開発します。
テーマ2 革新的養殖システム構築
種苗大量生産のための栄養化の高い初期人工餌料の開発を進めています。
コア技術1
ふ化仔魚に代わる初期人工餌料や、味を良くする出荷技術の開発などへの挑戦
コア技術2
スマ大量養殖生産を可能とする「ケーシングモイスト」など新規餌料開発への挑戦
目標
新しい初期餌料の発明
種苗大量生産のカギを握るふ化仔魚利用の低減·廃止につなげる技術を開発
現在の飼料系列は、ワムシ、他魚種の孵化仔魚、魚肉ミンチという系列であり、それが制限要因となっています。そこで、今までにない全く新しい発想の人工餌料を開発することにより、餌用ふ化仔魚の使用を大きく減らし、大量生産を可能にします。
活動報告
スマの完全養殖に関するこれまでの取組み
日本では「魚離れ」が進んでいると言われる中でサーモン(養殖)やマグロ類は非常に人気が高く、嗜好や食生活に大きな変化が起きていると考えられます。また、社会の持続性(SDGs)を重視する観点から、天然資源に影響を与えない「完全養殖」への切替えを国の施策と位置付けられています。そこで我々は新顔のマグロ類としてスマという南方系の小型マグロ族を見出し、クロマグロと並ぶ美味な魚として完全養殖産業の創出を目指して技術開発に取り組んできました。
松原孝博 教授
愛媛大学 南予水産研究センター
本プロジェクトで目指すのは、「品質のよいものを、たくさん作る」技術を開発することです。種苗大量生産のための栄養化の高い初期人工餌料の開発や、高品質なスマを出荷する技術の開発を目指しています。