センター長挨拶

松原 孝博教授

愛媛県南予地域に位置する宇和海には、リアス式の海岸に囲まれた風光明媚な内湾が多数見うけられます。こうした内湾は波穏やかである一方で、外洋からのダイナミックな海水の動きの影響を受けています。このような宇和海の環境は、水産業の中でもとりわけ養殖業にとって好適であり、魚類養殖、真珠養殖の生産高はいずれも我が国トップレベルを誇っています。しかしながら、水産物消費の減少、餌代や燃料代の高騰、魚価の低迷、就業人口の減少など、水産業を巡る近年の状況は厳しく、地域の基幹産業である水産業の衰退が大きく懸念されています。一方、愛媛大学は法人化後の平成17年に愛媛大学憲章を制定し、地域貢献を大学の主要な役割の一つとして明確に位置づけました。このような状況の中、水産振興に向けて地域に研究施設の設置を切望していた愛南町の強力なご支援により、平成20年4月、愛南町船越に旧西海町の庁舎を改修して愛媛大学南予水産研究センター(南水研)が創設されました(船越ステーション)。さらに、平成25年には、教職員や学生の増加に合わせて、旧西浦小学校を改修して大型飼育施設を備えた西浦ステーションが開設されました。現在では、松山地区在住の教員によって構成される松山ステーションとあわせ、3ステーション体制となっています。

南水研の主な目的は、水産に関わる生命科学、環境科学、社会科学分野における最先端の研究を推進するとともに、その研究成果を養殖生産、防疫、流通・販売、ぎょしょく教育などの現場に還元することにより水産振興に貢献すること、そして社会共創学部(平成28年度創設)や農学部から学生を受け入れ、水産や関連分野の将来を担う優れた人材として送り出していくことです。これらの目的のために、文理融合型の新しい水産学を目指していることや、地域密着型(レジデント型)の研究・教育を推進していることが、南水研の大きな特徴です。 国立大学法人は平成28年度から3つに類型化されることになり、多くの地方大学と同様に愛媛大学も「地域貢献型」の類型に属することとなりました。これにより、南水研の役割はさらに大きくなったといえます。このような重責を果たすためには、南水研メンバーによるいっそうの努力はもちろんですが、地域を中心とする学内外からのこれまで以上のご支援、ご協力が不可欠ですので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

南予水産研究センター センター長 松原 孝博