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センターの活動

40.四川省涼山彝族自治州での漢代鉄生産址踏査と鉄製品の調査
(村上恭通)(2011年3月15日〜3月19日)

 2011年3月15日〜19日、四川省最南端の行政区である涼山彝族自治州に四川大学歴史文化学院の李映福先生と赴き、漢代製鉄址の踏査と漢代鉄製品の調査を実施しました。 この4年間継続してきた『アジア北方遊牧民族社会と南方農耕民族社会間の初期鉄器導入に関する比較研究』の最終フィールド調査となりました。

 成都市から涼山彝族自治州西昌市まで飛行機で約1時間。そこから自動車で約3時間をかけて昭覚県四開郷を訪れました。雲南との省境まで約50キロにある彝族の村です。 この地域の彝族文化は特に注目されているところですが、この地域で調査研究活動を継続し、成果を挙げている四川大学歴史文化学院の趙徳雲先生にお誘いいただき 好谷村黒魯社漢代遺跡を訪れました(写真1)。狭い平地を取り囲み、彝族の数々の伝説が伝わる山々には在地性の強い石棺墓と漢墓が各所に造られ、 小高い丘には後漢代の画像?(煉瓦)があちこちに散乱しています(写真2)。趙先生はこの遺跡で平地における漢代漢族の居住域を限定しつつあり、 多くの研究者が少数民族の漢化を検討するうえで最も重要な遺跡として注目しています。また趙先生はこの平地を見おろす後背の斜面で金属滓を検出し、 その金属滓の実態が課題でした。今回、?や漢代陶器とともに地表で採集された鉄滓は製鉄にともなうものであると判断されました。 少数民族社会の漢化と最先端技術(製鉄)の周辺地域への導入という課題の解明にとって、きわめて重要な遺跡であることがわかりました。

 また西昌市では涼山彝族自治州博物館では館長の劉 弘先生に御配慮いただき、漢代鉄製品、青銅インゴット、そして銅柄鉄器を含む塩源青銅器を調査しました。 なかでも後漢代の鋳造鋤先(?)は圧巻でした(図1)。遺りが良いとは聞き及んでいましたが、たった今鋳造したような生きた鋳肌をとどめ、脱炭のあとまで細かく観察できるのです。 これまで河南省?池県や河北省副将溝遺跡出土鉄器など、たくさんの遺存良好な鉄製品を見てきましたが、 それらを上回る遺りの良さでした。重要な研究材料となること必至です。今後、成都平原における製鉄研究を継続する過程で、再度詳細な調査を約束しました。

 『アジア北方遊牧民族社会と南方農耕民族社会間の初期鉄器導入に関する比較研究』のフィールド調査も一段落。北はエカテリンブルグ(ウラル)、ノヴォシビルスク、アバカン (ハカス自治州)、 ミヌシンスク、南は成都のほか、重慶、昆明(雲南)、貴陽(貴州)で多くの方々にご協力いただきながら調査してきました。これからその成果をまとめていきたいと思います。


好谷村黒魯社漢代遺跡 後漢代の画像レンガ
好谷村黒魯社漢代遺跡 後漢代画像レンガ

村の様子 鋳造鋤先
村の様子 鋳造鋤先

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