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センターの活動

12.  2008年度 中国四川省製鉄遺跡調査

2008年12月、かねてより継続中の四川省製鉄遺跡の調査を実施しました。2008年5月12日に四川省では大地震が起こり、現地の研究者も救援活動やその後の文化財保護に追われていましたが、ようやく落着きを取り戻しつつあり、今回の調査実施の運びとなりました。 今回はこれまで発掘調査した古代製鉄炉の炉壁(レンガ)の観察・実測調査と、新たな遺跡の踏査を行いました。詳しい報告はまだ出せませんが、調査の一端を紹介します。

1. 炉壁の実測

これまでの四川省蒲江県における日中共同調査により、膨大な量の古代製鉄炉の炉壁・鉄滓等が出土し成都市と現地で保管されていました。一部中国において簡報が刊行されていますが、正式な報告書作成のため、現地を訪れ、資料の詳しい観察と実測を行いました。これにより各時代の製鉄炉の構造や材質の違いなどが明らかになってきました。

整理 実測
現地文物管理所における資料整理 愛大学生による実測
炉壁の実測 この実験にはアメリカからも参加者があった。
炉のどこに使われるかでレンガの形が変わってくる。
一つ一つのレンガの観察により、炉の構造を復元すること
ができる。
下條名誉教授に拓本を取っていただいた。
炉壁に使われるレンガには縄目や指圧痕が残る。

2. 遺跡踏査

遺物の調査と同時に遺跡の踏査を行った。現在中国では全国的に大規模な“文物普査”すなわち遺跡分布調査が行われているが、当センターと成都市との共同調査がきっかけで、四川では製鉄遺跡に注意するよう呼びかけられている。そのおかげで、多数の製鉄遺跡が新たに発見された。これにより農地改造などで急速に失われつつあった製鉄遺跡が、遺跡保存の指定を受けることとなり、破壊をまぬがれることとなった。

平楽鎮製鉄遺跡遠景 平楽鎮崖面の清掃
キョウライ市平楽鎮製鉄遺跡遠景
今後の調査のメインとなる遺跡の一つ
漢代の地層を含む。
平楽鎮製鉄遺跡の調査
今回、四川大学の学生も参加。

製鉄炉址 製鉄炉址
調査中、平楽遺跡付近で未調査の製鉄炉址が新たに発見された。明清時代のものと考えられる。 唐宋時代の製鉄炉址。農地改造による破壊が著しい。
 
白石先生 シンポ
50年代“全民大煉鋼”時の製鉄炉が完全な形で残っていた。 調査メンバー。今回、四川大学の大学院生も参加した。交流の輪が広がってきました。


今回の調査で分かったことは、四川には漢代から唐・宋時代、明清時代を経て、新中国成立時期に及ぶ製鉄遺跡が残っており、この地域の製鉄の歴史を全時代的にたどることができるということである。今後の調査・研究で各時代の製鉄のあり方を明らかにするならば、中国の歴史発展の中において、人々にとって鉄がどのような役割を持っていたのか知ることができるであろう。

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